「渋谷(しぶや)」という姓名について

「渋谷」という姓名は「しぶや」「しぶたに」の他にも5つほど読み方があるらしい。これまでに会った同じ姓名の人は親戚を除いて3人。3人とも「しぶや」さんだった。「しぶや」でも「しぶたに」でも読めない人は少ないが、「しぶや」と聞いて「渋谷」と書ける人は少ないようだ。「谷」の説明は簡単だが、「渋」がなかなか分かってもらえない。「渋」の熟語としては「渋滞」「渋面」があるが、どちらも説明してパッと分かる人は少ない。どうしても「さんずいに小さく「止」と書いて...」となる。
姓名といえば地名に由来する場合が多いが、「渋谷」はどうだろう?調べてみると「渋谷」の付く地名は秋田県から兵庫県にかけての範囲に1000カ所以上もあるらしい。関東では東京・渋谷が有名なので漢字を説明するのが楽になった。ただ、逆に「えっ!本当に?」という反応が返ってくるようになった。
せっかく地名との関わりに触れたので、姓名の「渋谷」と東京の「渋谷」の由来を調べてみた。
「渋谷」という姓名は陸前(宮城県北部)、美作(みまさか、岡山県北部)、備後(広島県東部)、薩摩(鹿児島県西部)、大隅(鹿児島県東部)に多いらしい。「渋(しぶ)」はソブ(祖父)やサビ(佐備、大阪府富田林市)と同系の言葉で、もとは水さびから来ている。水に鉄分や硫黄、塩分、その他さまざまな不純物を含んでいるときに、これを古代人はサビと言った。後にこれらの土地も指すようになったという。ということは、それに「谷」がついているということは、そのような水が湧き出る谷、もしくはそのような水が流れる谷を「渋谷」と言い、そこに住む人が「渋谷」という姓名を持つようになったということだろう。僕の場合は陸前の「渋谷」がご先祖なのだろうととりあえず結論づけた。
一方、東京の渋谷の由来には二説ある。一説は今の渋谷が海辺で「塩谷(しおや)の里」といい、塩谷が渋谷に転じたというもの。ここでも渋谷は水サビを意味している。もう一説は、相模国の渋谷庄(神奈川県藤沢市・大和市)の渋谷重家の一族が移り住んでいたことから来ているというものだ。こうしてみると、東京の渋谷は一番最初は水サビを意味する「渋」が元になっているのが分かる。